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できるところから一つずつ

できるところから一つずつ

2006年

2006年

コスモス掲載歌

1月号

秋彼岸墓の間に三つ四つ花火のやうな曼珠沙華咲く

東京の娘よりの電話に入り来るリーンリーンはアオマツムシか

鮭のぼる川へと鷲が去りし後池のほとりに鴨がまどろむ


2月号

夜半過ぎて屋根に激しき雨の音アレグレットのリズムを刻む

Duck、dog., Carなど覚えし一歳児 「よいしょ」はいつも日本語で言ふ

真夜中の月の光を掬ひとり楓紅葉がひらりと落ちる


3月号

巻紙に候文で書かれあり祖母から母へのむかしの手紙

俄かにも不安になりぬ我が住まふ高層ビルの耐震強度

「嫌ひだが今の日本に要る人」と小泉サンを友が評せり


4月号

「一世紀生きおほせたり初日の出」と詠みましし人つひに身罷る

ふた晩をかけてふつくら煮ふくめる 母の好みし丹羽黒豆

煮しめから蒟蒻を選り食べてをり太りたくない息子の妻は

突然にウオ―ウオ―と絶叫す常は寡黙な火災報知器


5月号

絵を指して「キリンはどんな声なの?」とむかし子が問ひいま孫が訊く

氷雨降る冬の鬱へのカンフル剤チャイナタウンを練る獅子舞は

獅子舞」を「ライオンダンス」と呼ぶ英語違ひなけれど拍子抜けする


6月号

王義之の筆使ひに見る緩急が千二百年経てまだリズム持つ

高野切れ かな連綿の優しさにすつとのびたる「し」の爽やかさ

祖母の締めし織りの丸帯母が締め今日また我がきちりと締める


7月号

三日ほど晴れ日の続き薄紅の桜花びらほんわり開く

咲き満ちて重なり合へる薄紅の花びら越しの春の青空

日向へと日向へと身を乗り出してチューリップ咲く競ひあひつつ

叫びあひ脅かしあひてバタバタと激しく動き鴨が争ふ


8月号


昨日より蕾が少しほぐれ来ぬ 明日は咲くべし黄色のあやめ

手にそつと触れてその葉を揺らしたり初めてあやめを見る二歳児が

受け口の唇少し開きたる美女の能面視線を落とす

時に掠れ時に鋭く笛に吹く哀しみの音風のごとしも(カナダの「能」公演)


9月号

マロニエの大樹の陰にほの暗しアパート裏の細き抜け道

大木となりしマロニエ四階の窓より高く花を咲かせる

霧雨に空気和らぐ染井墓地白きあぢさゐ息づくごとし


10月号

寂しさの吹き溜まりなり日暮れても灯の点らない窓のいくつか

ひらがなの「ひ」の字の描く曲線に涙の壷が隠されてをり

なかなかに虫の居所さだまらず今日もあなたは少し不機嫌

木の幹と色のよく似る鷲の雛まだ細き首寄せ合ひて立つ


11月号
 
海風にポプラの葉群れ騒立ちて又三郎の来るやうな朝

悠々と大空高く旋回す今年生まれし二羽の子鷲が

久々の家族写真のまん中に小さき私が庇はれて立つ

喜びはあはき淋しさ伴へり たとへば英語で子と話す時


12月号

ナイアガラの友より届くEメール 裏庭に飛ぶ蛍を伝ふ

少しづつ言葉の定義が食ひ違ふあなたの辞書と私の辞書と

CBCのニュースにも出る紀子様の入院の日のアーカイック・スマイル

「四人まで妻が持てる」とイラン人ハッサムさんがウインクをする

湿りたる土の匂ひもつけたまま茗荷は茗荷の香りを放つ



明治神宮 春の大祭献詠  特選
  
雄と雌すれ違ふとき鴛鴦が言葉を交はすごとく触れ合ふ



宮柊二館第十一回短歌大会  佳作
泥んこの足を拭ひてやりながら鬼ごつこの首尾こまごまと聴く 



バンクーバー短歌会

1月歌会

咲き終り夢の醒めたる曼珠沙華 続きは天の上に咲くべし
昼過ぎて激しさを増す秋の雨アレグレットのリズムを刻む


2月歌会 詠題「食」
「おいしい!」と物を食む時人はよく口を窄めて眼で笑ふ
「バーチャン」は広東語では「肉団子」と「ばあちやん」になり教へられたり


3月
「ずつと雨」とそれだけ言へばすむものを気象予報士さまざまに言ふ
暖かき雨につられて咲き揃ふ赤紫のヒースの小花


4月 題「一」
ストーンとあなたの言葉が腑に落ちる ビールの最初の一口のやう
演奏の始まる前の一瞬にピンと張りたる静寂の音


5月
哀しくて少しうるさく暖かき親になりたり 我の息子も
暖かくほのぼのとして寂しきは薄紫の母の想ひ出


6月 詠題 雲
どんどんと雲を北へと送り込み今日は海より寒き風吹く
雲行きの怪しくなりて幼な児の口許すこうし歪んでしまふ


7月
母鷲と同じ姿勢で巣に立てり頭の黒い子供の鷲も
雨の日は濡れて冷たき鷲の子か大きな盥のやうな巣にゐて


8月 詠題 朝
早朝のおしろいばなの白冴えて少女のやうに溌剌と咲く
朝風に雨の匂ひが漂ひて白き芍薬微かに震ふ


9月     
山並みの黒をバックに上がりてはすぐに消えゆく遠き花火よ
遠花火上がる微かな音のして今年の夏も中盤に入る


10月                
香ばしき匂ひが外まで漂へり茶粥の看板出す食堂に(紀伊、新宮駅前にて)
山茶花の垣根が自慢の舅(ちち)なりき 時に鋏を入れるなどして


11月 
寄せ豆腐匙に掬へばプルルンと震へて部屋の灯りに光る
ママさんの後を追ひかけチョコチョコと縮小コピーのやうな幼な児


12月
図書館の学習室の静寂にページ繰る音、囁きの声
いつも読むホームページの筆頭は「奥村晃作短歌ワールド」



東京歌会
ママさんの後を追ひかけチョコチョコと縮小コピーの幼な児駆ける


武蔵野11月
波頭崩れる刹那宙に浮く少し屈めるサーファーの影


歌人クラブ国際大会 (ハワイ)
風立ちて俄かに暗くなる午後に大き雷鳴窓を揺るがす
ピシピシと音を立てつつ稲妻が天から地へと怒りを放つ


座間勉強会
鴛鴦の夫婦(めをと)か付かず離れずに冬陽を反す川面に遊ぶ
雄と雌すれ違ふとき鴛鴦が言葉を交はすごとく触れ合ふ

少し降り小止みになりてまた降りてなかなか止まず晩秋の雨
山茶花の垣根が自慢の舅(ちち)なりき時に鋏を入れるなどして





Vancouver cherry blossom festival
http://www.vcbf.ca/qs/page/3023/3019/-1


“One more warm day,”
Smile the cherry buds,
“We will be in full bloom”

soft pink petals
trembling in the breeze
subtle and fragile



Submission for GUST#3   (2006/02/10)

(1)
In the cold rain,
Yoko has gone back to Japan
to her old home
cherishing warm memories
of her late husband

(2)
On a starry night
a red rose was sent to me
For many years since
we've been married
with no roses exchanged

(3)
On her 103rd birthday
she passed away quietly
Phone calls and e-mails
come and go like laser beams
spreading the news all over




Submission for GUST#4  (2006/08/14)


Submission of 3 tankas to GUSTS #4
Noriko Sato


On the edge of the nest
high up in a tree
a baby eagle is flapping
its small black wings
again….and again

Under the big tree
a baby bald-eagle chirps,
staggering along
two steps this way
and one step that way

From somewhere
among the birch trees,
I hear bald-eagles singing
high and clear tone
penetrating into the air





Tanka journal 28

Spring, again
By Noriko Sato

 
From their salmon hunt
on the river up north
bald eagles have come back
to show off their ferocious beauty
circling in the spring sky


Squawking loudly
snow geese are flying back
one flock after another
as if welling up
from beyond the horizon


Cherry blossoms,
brilliant and gorgeous
only a while ago,
melt themselves quietly
into the deepening dusk


On the morning
of his second birthday
Marc was so excited
to find a new train kit on a table
…only he does not know why

 
While bald eagles are gliding,
and snow geese are squawking,
the boy became two years old
playing under cherry blossoms
chasing after falling petals




Tanka International convention(Nov, 2006, at Hawaii)


Going up
to my suite high up
alone in the elevator
isolated from the world
as if I were in a cocoon.



For my husband
newspaper is a necessity
for his breakfast
He eats, he reads
and digests both of them




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